ドイツのロマンチック街道にあるネルトリンゲンという都市は1500万年前に隕石が落ちてできたクレーターに中世の街並みが立っているという面白い都市です。クレーターの直径は23〜25キロ。航空写真で見るのは、クレーター内につくられた都市のごく一部で、クレーター内の都市の中にさらに城壁に囲まれた街があります。
14世紀に築かれた市壁を見ることができます。(進撃の巨人の舞台のモデルになったとも言われているそうです。)
ネルトリンゲンの歴史
旧石器時代にはすでに人が住んでいた形跡があるネルトリンゲンですが、スポットが当たるのは13世紀ごろから。
1215年、ネルトリンゲンは皇帝フレデリック2世によって市の権利を与えられ、皇帝の都市になりました。そして、その年には、最初の市壁が建設されました。
その後、フランクフルトーヴュルツブルク・アウクスブルクとニュルンベルクーウルムのドイツの2つの主要交易ルートのちょうど交差点に位置するという立地から、交易の中心市として栄えます。
1327年には今もなお現存する市壁が建設され、壁のある市街地が4倍になりました。今も見ることができる中世の街並みは、14世紀から16世紀のころのものです。
17世紀に起きた30年戦争で、ネルトリンゲンは戦渦に巻き込まれ大敗北を喫します。都市はハプスブルク帝国軍に略奪されずに済みましたが、飢饉や伝染病で人口は半分にまで激減。さらにスペイン継承戦争でも戦争の影響を受けます。
悲劇は続き、ナポレオン戦争でネルトリンゲンは帝国都市としての地位を失います。
第二次世界大戦では、空襲により街は被害を受けます。いくら壁があっても空からの攻撃は防ぎようがありません。
しかし、この街のすごいところは、幾度となく悲劇に見舞われながらも、歴史的な旧市街は奇跡的に残ったことです。
街のつくり
上の写真からは、街全体を市壁がぐるっと囲っているのが分かりますね。全長2.6キロにも及ぶ市壁は14世紀につくられました。
また、街の中心部に建っている鐘楼のある建物は、聖ゲオルク教会です。ここを中心として放射状に道路がのびているのが分かります。
聖ゲオルク教会からは、街全体を見渡すことが出来ます。
クレーター跡にたてられたってホント?
でも、この航空写真を見ても、街は平面のところに立っていると思いませんか?
クレーターだったらもっと凹んでいるんじゃ・・・。と思った方、おこめんも、です。
どうやら、隕石が衝突した部分は、一旦海の中に沈み、水中の溶解物などが堆積した後、また陸化したそうです。
長い年月をかけて、平に戻っているんですね。
この隕石が衝突し、クレーターになった部分を「ネルトリンガー・リース」と呼ぶそうです。
クレータの淵の部分は、丘のようになっていてその高低差は100メートルから150メートルほどあるそう。
堆積層ができても100メートル以上の高低差ができるほど、隕石の衝突はものすごい衝撃だったのでしょうね。
ちなみに、隕石が衝突したと結論づけられたのは、20世紀に入ってから。それまでは火山説が有力だったとか。
グーグルマップで見ると、ネルトリンガー・リースの円形の形がよく分かります。(緑色の森の部分がリング状になっています。)
ネルトリンゲンはネルトリンガー・リースの中心部からやや左下にずれたところに位置しています。
クレーター跡だとわかる何世紀も前から街があったことから、街の人もまさかクレーター跡に住んでいるとは思っていなかったようですね。
今なお残る美しい中世の街並み
ネルトリンゲンの市壁は、現在も保存状態が良く、全長2.6キロを歩いてみて回ることができますよ。
聖ゲオルク教会の塔からは、街を一望できます。(350段の階段をのぼって上がることができます。)
この塔は街のどこからでも見え、街のシンボル的存在です。
市壁がハッキリと分かりますね。
見れば見るほど、進撃の巨人。
街全体がおとぎの国のまま保存されたかのようですね。物語の舞台になるのも納得ができます。