ヨーロッパでは、多くの教会には鐘楼があります。
日本でも多くの寺院で梵鐘(除夜の鐘などで鳴らすあの鐘です)がありますよね。
実は使われ方はどちらも似ています。
目次
鐘の起源
紀元前1万年前にはすでに鐘の元となる青銅器が中国やインドで作られていたそうです。
そののち、朝鮮半島から日本へ、ヨーロッパへ、大陸の端から端へ、世界中へと広まります。
今、寺院に置いてある梵鐘と同じものが、中国では紀元前1000年前にはすでに作られていて利用されていました!鐘の歴史は本当に長いのですね。
使われ方も今と同じで、宗教行事、戦争の合図の際にならされていたそうです。
日本における鐘の役割
寺院で用いられる最も大きな法具である、梵鐘。
法要など仏事の予鈴として撞(つ)くという、仏教の重要な役割を果たす。朝夕の時報(暁鐘 - ぎょうしょう、昏鐘 - こんしょう)にも用いられる。ただし、梵鐘は単に時報として撞かれたものではなく、その響きを聴く者は一切の苦から逃れ、悟りに至る功徳があるとされる。(出典:wikipedia)
wikipediaによると、「その響きを聴く者は一切の句から逃れ、悟りに至る功徳がある」と言われるほどの清める力があると信じられてきたことが分かります。梵は梵語で「限りなく清浄なもの」を意味します。梵鐘とは、その名の通り、つくことであたりの空気を清める道具なわけですね。
その他にも、時報としての役割、宗教行事の始まりを知らせる役割などにも使われてきました。また広島平和の鐘のように哀悼・鎮魂の鐘としても用いられることもあります。(鐘の種類によっては、「今からお参りします」という挨拶を告げるためのもの、家の呼び鈴のような役割をするものもあります。これは、神社のお賽銭箱の上にあるものがそうです。)
現在は、時刻を知らせるのに使われることはほとんどありませんが、除夜の鐘として煩悩を打ち消すために年の瀬にならされるのはよく知られていますね。
確かに鐘の響きは、体の奥に響き、自分自身が発しているような、まるで自身の鼓動のように感じられるときもあります。煩悩を打ち消し、「心の目を覚ます」力があると信じられてきたのもわかります。
ヨーロッパにおける鐘の役割
日本と同じ役割を持つ
もともと、ヨーロッパにおいて鐘は信号として使われてきました。
労働時間の開始、終了の合図、火災や疫病の警告、教会の礼拝の始まりを知らせたそうです。
あれ?これってなんだか日本と似ていませんか?朝と夕の鐘を鳴らし、宗教行事の始まりを告げる梵鐘とほとんど役割が似ていますね。不思議ですね。
他にも、洗礼や埋葬のときにも鳴らされたそうですが、それも広島の鐘のように哀悼や鎮魂の鐘として使われているのも日本と同じです。
「鐘は神の声であり、人々の祈りであり、人間の生命を喩えたもの」なのだそう。葬式では鳴らし方によって意味が変わり、「連打は人生の生を」「すべての鐘を同時に打つのは肉体の死を」「一斉にならされる祝いの鐘は魂の復活を」表すそうです。
悪魔をも支配する鐘の力
ヨーロッパで面白いのは、鐘は聖別の儀式を済ませると、悪魔を支配できるようになると言われていること。追い払うだけじゃなくって支配までしちゃう!
つまり、教会(鐘)>>>>悪魔
教会の神聖と正義、奇跡をアピールするのに鐘の音の力は絶大だったようです。
人々にとって鐘の力がゆるぎない正義そのものだということが分かりますね。
あらゆる国で鐘の持つ力が信じられているのには理由があった
合図としての役割は大きな音が鳴る鐘に与えられる役割として合点が行きますが、不思議なのはどちらも宗教行事で使われること。
鐘が神聖なものとしてあらゆる国で使われているのには実は理由がありました。
鐘の音には、突如として発せられる音、その瞬間の後に響く音、音の深さや複雑さによって、生命の始まりの瞬間をイメージさせる力があります。仏教でも「心の目を覚ます」役割があるように、鐘の大きな音の響きによって人は夢から目を覚まし、自らの生命を生き始める、そんな力強さがあるのです。
生命力をイメージする鐘の音には、呪術的な力があるとされ、その音によって邪悪な力を退け、清めることができると人々は信じてきました。
鐘楼の門番「悪魔除けの顔の彫刻」
ヴェネツィアのほとんどの教会には鐘楼があります。鐘楼のドアにはよく見ると顔が彫られています。しかも、面白い顔です。
これは、悪魔が鐘にいたずらをいないように、悪魔を追い払う魔除けの役割を果たしています。いろんな鐘楼に魔よけの顔の彫刻があるので探してみるのも面白いかもしれません。
有名なサンタ・マリア・フォルモーザ・カステッロ教会(Chiesa di Santa Maria Formosa)の悪魔払いの顔
最もグロテスクなもののひとつに、ヴェネツィアのサンタ・マリア・フォルモーザ・カステッロ教会のものが挙げられます。1678年に再建された際につけられたこの顔の彫刻は、僧侶のフェデリコ・ズッコーニの手によるもので、建設当時から非常に有名です。
あまりにもおかしな顔なのでいろいろなミステリーが作られました。もともとは悪魔で、それを石化させて他の悪魔への見せしめとして晒してあるだとか、目が動いたとか、悪魔が近づいたときはうなり声をあげて知らせるとか。
悪魔も支配されないために鐘にいたずらをしようとする、それを食い止めるために魔よけを置く、悪魔と人間の攻防が面白いです。
まとめ
鐘の歴史は、どの国でも宗教と深いかかわりがあります。
伝説や伝承でも鐘が登場するものもありますよね。
ひとりでに鳴ったり、公正な裁きを受けようとした蛇が鐘の紐を引いたり。鐘が地中、水中に沈んでいる沈鐘伝説も各地に多く、見えない所で鳴ったり、有事の際に出現したりします。
鐘はまた天候を変え、水の出る場所を教え、いろいろ効く薬になるとも信じられています。
ヨーロッパを旅行される際に鐘楼をのぼることがあれば、この鐘の持つ力に注目してみると面白いかもしれません。